南アルプス山麓

大鹿村だより

前島重子/ 旅舎 右馬允(うまのじょう)女将

 

 大鹿村は南アルプスの麓にあります。お盆が明けるころは、もう秋の気配がしのびこんできて、野菊が楚々と咲きはじめます。 やさしく揺れるススキやコスモスは、秋風の贈り物です。

 9月に入ると同時に、庭先の栗がパラパラと音を立て、山々ではきのこたちのおしゃべりが始まります。 さくらしめじ、むらさきしめじ、とちしめじ、山の生気をたっ ぷり吸い込んだきのこ飯の味は格別です。雑きのこと言っては失礼かしら、でもやっ ぱり松茸にはかないません。 むしゃむしゃなんて食べられませんもの。ひとくち口にしては目をつむり、かみしめるようにいただきます。松茸をかむ音って、うっとりするほどいいのです。 

…つづく


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